マルハニチロ様ダイバー視点フォーラム「Working Woman Session」
2019年2月13日、21日の2日間で開催された、マルハニチロ株式会社さま初の女性社員向け社内フォーラム「ダイバー視点(シティ)フォーラム2018~Working Woman Session~」にて、グラフィックカタリスト・ビオトープとして場のデザインに関わらせていただきました。
お問い合わせをいただいたダイバーシティ推進室ご担当者さまからは、活動に取り組む中で、様々な立場の女性社員と人事部との間にまだまだ距離感があると感じていること、これをなんとかして解消し、よりよい組織作りに繋げていきたいという想いをお伝えいただきました。
女性を取り巻くライフイベントは、職場における職務付与や昇進昇格の機会などに少なからず影響しており、働く女性のモチベーションの維持なども含め、多くの企業において課題となっています。
こういった場合に大切なのは「よくできた制度」だけではなく、心理的安全性が確保された場で、自分たちが何を思い、どうありたいのかという対話を繰り返して、自分たちの組織に対して能動的に行動できる関係性を作ることです。
本フォーラムは、当初よりマルハニチロ様内部でそのための場として企画が進んでおり、さらによいものとするために、場の雰囲気を残し伝える目的でグラフィックレコーディングを活用したいという内容のお問い合わせをいただきました。
余談ではありますが、本件はご担当者さまが別のイベントでGCB松本のグラフィックレコーディングを見て「どうしても自社イベントでこの方にお願いしたい!」と感じていただいたことがご依頼のきっかけになりました。
グラフィックレコーディングの本質は、絵柄や画力では決してありませんが、こうして自分たちの想いを伝えるために必要だと感じていただけたことはとてもうれしいことでした。
こういったお問い合わせをいただいた場合、私たちは単にグラフィックレコーディングを行うのではなく、どういった想いを持ってどのような場を作りたいのかをお聞かせいただき、その上でお手伝いできることがあれば様々なご提案をさせていただきます。
場合によってはイベント設計からファシリテーションまで、全体をプロデュースをさせていただくこともありますが、本件ではマルハニチロさん側でしっかりとした骨子を作られていたため、ポイントポイントで私たちの持つメソッドやツールを組み合わせ、一緒に内容をブラッシュアップしていく形で関わらせていただきました。
今回は企画に十分な時間があったこともあり、オトグラフィカードやエモグラフィといったツールやメソッドを実際にご体験いただいた上で、プログラムづくりを行うことができました。
本イベントでGCBが担当させていただいたのは、タムラカイによるエモグラフィを用いた「描く対話」のファシリテーション、および松本花澄によるイベント全体のグラフィックレコーディングになります。
以下、概要をご紹介します。
まずはタムラカイが開発した「オトグラフィカード」を使ったアイスブレイクを行いました。
今現在の自分の気持ちを表すとしたらどんな音だろう?「そ~っ」「ず~ん」「ざわざわ」「ボロッ」などなど…ネガティブな印象の言葉が多く、会場全体に不安な気持ちが漂っていたように感じます。
「女性活躍推進」と聞いて、どんなことを感じるか、「女性」という立場で普段感じている苦しみについて、匿名性の保たれたアンケートシステムで回答を集め、その結果がリアルタイムに前方スクリーンへ反映されていきます。
「結局いつも負担は女性」「全部できて当たり前」などなど…グラフィックレコーディングを担当する松本自身が2児の母ということもあり、ペンを持つ手に心なしか力が入ります。
働いてもいなくても、結婚していてもしていなくても、子供がいてもいなくても、どんな立場でも女性は苦しい!大変すぎる!という本音に、少し空気が参加者の空気が重くなっていきます…。
「では、私たちは、なんのために働いているんだろう?どんな働き方が理想なんだろう?」とさらに踏み込んだ本音に迫っていきます。
今回はアメリカの教育学者ドナルド・E・スーパーが提唱した「14の労働価値」の中から、自分が大切にしている/したい価値観を選び、エモーションマップを用いて、感情という切り口から参加者一人一人の想いを掘り下げていきました。
エモーションマップが描きあがったら、グループで回して書き込みをする「話さない対話」でシェアしていきます。皆さんそれぞれにじっくり目を通されていました。
グループ内でのシェアが終わったところで、ここまでの内容について松本からグラフィックレコーディングを元に場へのフィードバックさせていただきました。
これはグラフィックハーベスティングとも呼ばれるものです。単に描くだけではなく、その場を俯瞰して気づきをシェアし、別の方向からの思考や対話を促すのもグラフィックカタリストの役割です。
「ライフスタイル」という価値観からプライベートを大切にしたいと思う一方で、「社会的評価」や「社会的交流性」など、他者との関わりが仕事のモチベーションに直結しているといった声が多く見られました。中には他人の目を気にしすぎてしまう、迷惑だけはかけたくない、といった声も…。
ここで午前の部は終了。
ランチの時間には、午前のワークを共にしたテーブルで様々な話に花が咲いていきます。
午後の部は、ここまでの内容を踏まえ、「では私たちは3年後どのように働いていたいだろう?そのために周りにどのような変化が起こったら嬉しいだろう?」ということを考え、「スパイラルマップ」の形でストーリーとして落とし込んでいきます。
描きあがったスパイラルマップをグループの中でシェアしていきます。
事前の打ち合わせでは「『会社にこんなことしてほしい』といった意見が出れば次の方向性が見えるのでうれしい。」と話していましたが、さらに一歩進んで「私はこんなことをしてみようと思う」といった、主語が「自分自身」の内容も多く上がっており、参加者の心に火がついた手ごたえを感じました。
それぞれのシェアを経て、いいなと思ったことや新しく思いついたことなどを、自分のスパイラルマップに付け足していきます。ここで描いたスパイラルマップは回収せずに、ご自身でお持ち帰りいただきました。皆さんの今後の行動の指針になれたらいいなと思います。
さらにもう一つ、今回は同じグループメンバー同士でギフトメッセージを送り合うというワークを入れました。たとえ自分一人では難しくても、誰かの後押しが勇気をくれることもあるということを感じていただくための時間でした。
そして最後にもう一度オトグラフィカードで今の気持ちを表現してもらいました。ここまでの内容を終えて、率直に今どんな気持ちかをグループの中でシェアします。
「キラーン」「パァァァ」などなど、フォーラム開始当初の不安が少し晴れ、ポジティブな気持ちを表現した音を選ばれている方が多かったように感じました。
最後に松本から今日一日を通したフィードバックをさせていただきました。
今回のフォーラムはずっと同じテーブルのメンバーとやりとりをしたので、他のテーブルでどんな意見が出ていたかまではわかりません。松本がテーブルを回りながら話されている内容をピックアップし、フィードバックの場で全体にシェアしていきました。
事務局の皆様と記念撮影!(Working Woman → WOWOポーズ)
こちらのグラレコは後日マルハニチロ様社内で様々な形で掲示いただくとのことでした。このフォーラムとグラフィックレコーディングが、マルハニチロ様の変化のきっかけになれたらとてもうれしく思います。
お問い合わせをいただいたのが2018年8月。そこから約半年をかけて準備されたフォーラムは、とても豊かな時間が流れていました。関わることができて本当にうれしかったです!関係者の皆様、どうもありがとうございました!
【マルハニチロ担当者からのコメント】
ダイバーシティ推進と言うと、「女性活躍」というテーマが注目されがちですが、我々ダイバーシティ推進室としては、今後、会社の持続的な成長を考えた時に、組織を高めるために所謂キャリアアップのような、「会社が社員に力をつけることを求める」だけではなく、「より多くの社員がワクワクした気持ちで働き、本来の力を発揮するためには、組織や周囲がどうあるべきか?」を今一度見つめ直した上で「女性活躍」を考えるべきであり、それこそが我々の使命だと感じていました。そしてその想いを社員に伝えた上で、社員が求めていることを知ることを目的とし、ダイバー視点(シティ)フォーラムの実施に至りました。
しかし、我々と社員の交流をメインとした本フォーラムにおいては、まず人事部と社員の間で感じられている距離感を縮め、心理的安全を確保しなければならず、その場作りに頭を抱えていました。その時、偶然にもグラフィックカタリスト・ビオトープさんの存在を知り、熱烈なプッシュをさせていただきました。タムラカイさんと松本さんには当日のご協力だけではなく、本フォーラム実施の背景や目的、ゴールイメージ等のヒアリングから、ツールのご紹介や使い方まで、当日までに綿密な打ち合わせを丁寧にしていただき、フォーラムの構成作りにもアドバイスいただきました。
タムラカイさんのツールは全てにおいて、【楽しみながらワークをしていると、気が付いたら自分の想いが出ていた】といったように、とても自然な形で心の声を引き出すことができ、更には様々な立場の人同士が気負いなく発言できる素晴らしいツールで、これは一方的に人事が投げかけても出てこないものでした。ワーク中にその場を和やかにし、一気に社員の人たちを惹き込むタムラカイさんの進行はさすがでした!
また、松本さんのグラフィックレコーディングは、あちこちで発言された言葉をバランス良く拾っていただき、全体の声としてリアルタイムに共有できるだけではなく、その場にいなかった人でも後日、グラフィックレコーディングを見ることで、その場にいたかのような流れで参加者の想いを共有できる、全く新しいかたちの議事録でした。松本さんの描くイラストは分かりやすいだけではなく、テイストが柔らかく可愛らしいので、通常であれば嫌な印象を受けたり、棘を感じたりするものであっても、「そういう声もあるよね」といった形で非常に共感を生みやすく、こちらも人事がまとめる報告書では、その場の雰囲気、全体の想いなどはうまく表現出来なかったと思います。
当初のゴールイメージであった、「会社と社員が同じ方向を向くこと」を概ね達成出来ただけでなく、グラフィックカタリスト・ビオトープさんの様々な手法を取り入れたことで、「今までの人事部から変わろうとしている…まずは人事部が新しいことに取組んでみる…」から、「会社は変わろうとしている!」という姿勢を、間接的にではありますが、少しでも社員の人に受け取ってもらえたと感じています。本フォーラムは、グラフィックカタリスト・ビオトープさんのご協力がなければ実現しませんでした。一緒にお仕事をさせていただけたことを心より嬉しく思い、感謝しております。今後も様々な形で社内アプローチをしていく予定ですので、その際にはまたお世話になりたいと思います!どうもありがとうございました。
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